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ともに、かける

「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問

概要

皆さんは「具体と抽象」の違いを認識できているでしょうか。「具体と抽象」の概念を理解し、往復することはとても強力で応用の効くスキルの一つです。一方で違いを把握していないとコミュニケーションギャップが発生することが多々あります。本書ではそのコミュニケーションギャップを解消することを目的として様々な表現を用いてその違いを説明し、「具体と抽象」のそれぞれが持つ重要性を説明します。また、それらを行き来するための「抽象化」と「具体化」について説明しています。

総評

まず最初に絶賛させてください。義務教育としたいくらいとても良い本でした。同著者の名著である具体と抽象の副読本という立ち位置?のようですが、個人的には本書の方がおすすめです。

本書でも記載がありますが、抽象を扱える人は具体の世界を把握することができます。一方で具体を扱える人の中には抽象の世界を把握することができない人がいます。そのため具体の世界から抽象の世界へ行けない人は多く存在します。実は私も3年前は具体の世界に留まる一人でした。なのでこの感覚は身をもって経験しています。上司とのコミュニケーションギャップに悩み、ある日自身が具体的なことに着目しがちで認識齟齬が発生していると仮説を立てた私は具体と抽象を手に取りました。この本を読み、「具体と抽象」の違いを理解し、強く意識するようになってから少しづつ上司とのコミュニケーションギャップがなくなっていきました。また抽象化ができることにより視座が上がり、物事の吸収力が上がりました。抽象化とはそれほど強力なツールなのです。(ちなみに上記意見に対して反証のみが思いつき、そんなことはないと思った方には本書がよりおすすめできます。それ自体がコミュニケーションギャップであり、本書により解消が期待できます。)

最初に具体の世界から抽象の世界に行くことはとても難しいことです。まず「具体と抽象」の違いを認識することが難しいからです。本書の素晴らしい点は豊富な言い換えと秀逸な表現力により「具体と抽象」を綺麗に説明している点です。具体の世界にいる人は具体的な内容からしか理解ができません。本書では複数の具体的な表現により「具体と抽象」を説明しているため違いを理解するためにはとても良い書籍です。また、ある程度「具体と抽象」を理解した私からしても、表現が秀逸で感動しました。ここまで綺麗に言語化することは私にはできません。もはやアートです。「具体と抽象」の認識が曖昧な方には特におすすめですが、ある程度理解している方にも同僚や後輩に説明する上でより良い表現力を学ぶことができるのでおすすめできます。

一部ですが良いと感じた表現を紹介します。

抽象化とは「まとめて一つにする」こと

抽象化の最も基本的な定義は、同じ属性を持ったもの同士をまとめて一つに扱うという「分類」の機能です。

実に本質的な表現だと思います。例えば、下図のように具体の集合として図形が12個あります。これらはそれぞれ色や形、大きさなどが異なり具体の世界では12個の図形です。抽象の世界ではこれらを分類することで複数の図形をより少ない数で表現できます。例えば形で抽象化した場合は12個の図形が四角、三角、丸の3個で表現できます。これにより個別を一括で扱うことができます。これが抽象化の一つの力です。

抽象化とは「都合の良いように切り取ること」

この考え方は私は意識できていなかったので、非常に良い気付きとなりました。上記の例からも分かる通り、抽象化の軸は複数存在します(上記例だと形、色、大きさなど)。どの軸を選ぶかは抽象化をする人の都合によって変わります。例えば形に着目したければ形で分類しますし、色が重要であれば色で分類します。このように抽象化には意志と意図が含まれているため、場合によっては騙されたりするため受け取り方には気をつける必要があります。また、抽象化の軸を誤ると本質を見誤る可能性などもあります。

まとめ

本書は「具体と抽象」を豊富な言い換えと秀逸な表現力により説明しており、違いが曖昧な方には特におすすめです。また、ある程度理解している方にも同僚や後輩に説明する上でより良い表現を身につけることができるので役に立つかと思います。