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ともに、かける

THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

概要

SaaSサブスクリプションモデルの流行に伴いセールスフォース・ドットコムで活用されてきたThe Modelが広まっています。本書ではThe Modelの「マーケティングインサイドセールス・営業・カスタマーサクセス」の役割・戦略・プロセスを解説するだけでなく、プロセスを実行する「人」にも焦点を当て、人材・組織・リーダーシップという観点についても著者の経験を交えながら説明がされています。

批評

SaaS企業に適した営業プロセスを「何故必要なのか」「どのように役立つのか」などを含めて理解できたため、とても勉強になりました。今後SaaS企業でエンジニアとして働く予定のため、事業を支える営業について理解できたのはとても良い機会となりました。営業の方だけでなく、これからSaaS企業で働く方・SaaS企業で働くエンジニアの方々にもおすすめの一冊です。

私は現職で研究部署に勤めているのもあり、業務では営業との関係が薄いです。そのため、営業の基礎すら知らない状態だったので、学ぶことはとても多かったです。そのような状態でも丁寧な説明があるため、インサイドセールス、カスタマーサクセスといった新たな組織が何故必要かなどは理解できました。

また、SaaSビジネスで重要なチャーンレート(解約率)やアップセル、クロスセルなどの用語や「市場やアナリストがSaaSモデルの企業については、利益ではなく売上の対前年成長率を最も重要なベンチマークにしている」などの一般論なども学ぶことができました。(ちなみに、最近は投資家が気にするベンチマークも変わってきているようです。)

営業プロセスを切り分け、各段階での情報を数値化・可視化する

The Modelは数値で判断することを基本的な考え方としています。例えば、営業プロセスをマーケティングインサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4段階に分けます。そして、それぞれの段階でKPIを追跡します。指標は各社に合わせて作成します。

KPIの例(https://www.salesforce.com/jp/hub/sales/the-model/ より引用)

GoogleのSREもそうですが、数値による判断を原則とした科学的なアプローチが近年流行っている気がします。SREでも何をSLI/SLOの指標とするかは各社のサービスの特性で様々です。The Modelの上記指標も、各社に合わせて検討する必要があり、そこが一番難しいところなんだろうなと思います。

カスタマーサクセスの重要性

カスタマーサクセスの重要性を理解できたのはとても良かったです。

今までは製品を売った時点で利益を得るモデルでしたが、サブスクリプションモデルでは継続して利用していただく中で小さい利益を積み重ねていきます。解約ができてしまうからこそ、解約率をどれだけ抑えられるかが重要になります。製品を売った後、最悪顧客が成功しなくても利益が回収できる製品販売のモデルと異なり、サブスクリプションモデルでは顧客の成功は必須条件なのです。そこで、カスタマーサクセスの出番です。カスタマーサクセスでは「オンボーディング」や「導入支援(コンサル)」「活用促進(活用度評価)」などの施策を実施します。

「ただ作って、売って終わりじゃない」という考え方は作り手としては好きな考え方で強く共感しています。どれだけ良い製品でも、活用されなければ価値を発揮できません。顧客の課題を解決すると信じてSaaS製品を作りますが、実際には顧客の課題はそれぞれ少しづつ違う形をしているのだと思います。その形に合わせて製品活用のお手伝いをし、顧客を成功に導く。とてもやりがいのある良い組織だなと思います。ビジネスのために必要という観点で生まれた仕組みかもしれませんが、より顧客の成功に寄り添うという点で企業の社会的意義を果たす重要な仕組みだと思います。